応募状況
私立高校の応募状況は、前年比で推薦入試が約2600人の増加で一般入試が約1300人の減少、つまり総数で約1300人増加しました。2023年12月に授業料の実質無償化について、所得の制限をなくすことが発表されました。東京都では、生徒と保護者が都内在住であることを条件に、東京都独自の助成制度「私立高等学校等授業料軽減助成金」が設けられています。前年度は発表時期のタイミングもあり、さほどの影響はなかったかもしれないものの、今年度はそれが周知されたような印象があります。そのため、もともと単願で私立高校への進路を考えていたという家庭に加え、都立高校との併願で検討していたが私立単願に切り替えたという家庭も一定数あったと考えられます。このような支援金等の制度のほかにも、高大連携等の動きも年々多くなっており、それがより全体的な私立志向への追い風になっていると考えられます。
各校の選抜状況
①国立大附属筑波大学附属は男女ともに22年度から連続して応募者減です。特に男子では45人12.1%の減です。また今年度は女子の棄権者は比較的少なく、男子の棄権者(54人)が増えました。実質倍率も年々下がってきています。2025年度より「新幹線通学を認める」という変更点もあるので、それが今後どのように影響するか要注意です。お茶の水女子大学附属は15人の応募者減でした。22年度から応募者数は下がり続けています。とはいえ、定員120名のうち、附属中からの入学者(例年約60名)を含む数字なので、応募者が減っているとはいっても非常に難しい入試です。東京学芸大学附属は22年度から連続の応募者増です。今年度は応募倍率が10倍を超えました。また、合格者は22年度から240名→266名→274名→378名となっており、今年度は前年より100名以上多くなっています。入学辞退の増加を踏まえて、このように多くの合格者を出している可能性もあります。東京科学大学附属科学技術は、24年10月に東京医科歯科大学と東京工業大学の統合校「東京科学大学」へと校名が変わったことに伴い改称しました。推薦試験は受験者が40人で前年度と比べ34人46%の減となっています。2026年度4月に予定されていた大岡山キャンパス(目黒区)への移転・新校舎建設に向けたスケジュールですが、2027年4月に延期となりました。
②私立難関進学校および大学附属校
開成は応募者が511人で、ここ数年の中では21年度の498人に次ぐ少なさですが、実質倍率は2.9倍で、難しい入試であることには変わりません。5科型入試を導入して5年目の巣鴨は、3科型入試の合格者数が減り、実質倍率4.60倍と非常に高くなりました。少しずつ「5科型に統一する」方向に舵を切っているようにも考えられます。
2026年4月から日本学園が明治大学と系列校化、順天が北里大学の附属校になります。高校の3年間で学力が伸びればもっと上のレベルの大学に進学できるかもしれませんが、その可能性より併設大学進学の確実性を重視する受験生が多いのではないかと思われます。
③私立進学校
品川翔英は内申基準の加点措置について、難関進学と国際教養で「加点は最大2まで」としました。総合進学をのぞく3つのコースで応募者が増加しています。定員や内申基準などの変更が続いているので、今後も注意が必要です。錦城学園は推薦受験者61.9%増の238人で、200人を超えたのは20年度以来のことです。加点措置において「検定3級2つ以上で+2」の項目が追加された影響があったかと思われます。東洋は前年度に内申基準を下げ、今年度はその基準のまま入試を迎えました。推薦受験者は29.6%増の526人、一般応募者は33.8%増の1333人と、どちらも大きく増えています。駒込は定員の変更はありませんでしたが、特Sコースの推薦3科基準が1下がりました。その影響で、一般応募者は減りましたが、推薦受験者は増えています。SDH昭和第一は推薦受験者が26.3%増の307人でした。一般応募は実質倍率が4倍近い結果となり、非常に厳しい入試だったことが分かります。岩倉は定員や内申基準に変更はありませんでした。推薦・一般ともに増加で前年度とは対照的な結果になりました。隔年現象の傾向があります。関東第一はアグレッシブとアスリートのA推薦の基準が1上がりましたが、推薦受験者は21年度から増え続けています。